北陸旅行6日目 移動

この日は中身がない。驚くほどない。旅行中に中身がないことあるか?

いやもちろんゼロではないのだがミスやら何やらが重なってほとんど移動で終わった。充実した前日に比べると中身がかなり薄いが、連日あんな充実してても疲れてしまうのでね。

 

 

近江市場

金沢の宿を出たのが8時くらいで、荷物を一時的に預けて近江市場の海鮮を食べに行った。やはり海鮮をもう少し食べておきたい気持ちに嘘はつけなかった。比較的安くて評判もよさそうな回転寿司に足を運んだ。回転してるのは湯飲みと醤油皿くらいで、もはや回転させる必要ないのだろうなと思う。

行った店ではランチ限定なのか700円で10貫のセットとかもあって、コスパが良さそうであった。ただ、のどぐろも込みの2000円セットがあり(海鮮目当てで旅行来てるしな……)とこちらにした。結局それなりに払っている。お金を落とすことが大義名分になっているのか、望んでないものにもお金を払おうとしているのか、たまにわからなくなるが、一応今回はのどぐろ目当てということで納得した。やっぱりのどぐろ美味い。とはいえ舌を満足させる水準が一段階上がってしまった感があって不安が残らないでもない。いやなんで寿司食ってネガティブになってんだ。

寿司を食べ終わったら土産物を物色した。のどぐろ関連を……とも思ったが、意外と地元のものではなかったり加工めっちゃしてたりとかで手が出にくい。干物とかもしれっと輸入ものも多くてなかなか困ったのだが、ほたるいかのソフト煮干というのを見つけた。原材料に「ほたるいか富山湾産)」しかないのは最強だった。

 

 

移動

金沢を離れる前に心残りはあるような無いようなで、強いて言えば国立工芸館にやや興味があったのと、喜八工房に挨拶に行っても良かったのとだが、いかんせん雨がすごいので足が重かった。まともに調べていないせいで福井への移動時間がよくわからなかったのもあり、とりあえず出発することにした。東京感覚でとりあえず駅についてから調べたところ、いたるところで待ち時間が発生することが分かった。とりあえず土産物などを見ながら目的の電車に乗り、昨日ぶりの加賀温泉駅を通過し、福井駅に到着した。その間、本を読んでようかなとも思ったのだが、旅行記がその時点でけっこう延滞していたのもあって続きを書いた。なるべく記憶が新しいうちに書き残したい。

福井駅に着くと今度は1時間待ちになるので駅を散策をした。福井駅も新幹線が開通する予定の駅で、着々と工事が進められていた。改札を出る前から目立っていたことだが至るところに恐竜がいる。新しくできたであろう屋上広場には恐竜模型がいくつもあって、デフォルメされたちっちゃい恐竜がベンチの角で寝てるのがかわいかった。駅前広場には動く恐竜模型があって、片方はフクイティタンというやつらしい。名前からしてこの辺で見つかった新種ということだろう。恐竜が有名と聞いてはいたが、こんなにワクワク恐竜ランドだとは思っていなかった。

ちょうどいい時間になったので九頭竜線のホームに上がったのだが、様子がおかしい。どうやら金沢行きとなっていて、はてこの電車は金沢へ行くのだったかと思って時計を見ると発車予定時刻を数分過ぎている。見れば今いるのは1・2・3番線ホームで、僕が乗る予定の九頭竜線はホームの端っこにだけ存在する2番ホームに停車していて、いつのまにか出発していたらしい。調べると次の電車は約2時間後だ。この手の田舎の電車あるある、聞いたことはあっても自分で体験するのはたぶん初めてだ。一回外に出て時間を潰そうと思い、駅員さんに事情を話したところ「あぁ……」と本気で同情され、入る時に見せてくれればいいよという話になった。ありがとうございます。

 

幸い駅前にはちょっとした商業施設みたいなものがあったので、プロントに入ってさっきの旅行記の続きを書いていた。頑張れば城跡とか福井駅周辺でも色々あったようなのだけれど、すでにちょっと暗くなっていたし雨もしっかり降っているので諦めた。というか連日の旅行でちょっと疲れが目立っている。思い返せば羽を伸ばす系のことほとんどやってない。ずっと座りっぱなしでもまぁいいでしょう。

今度は少し余裕をもってホームに待機しておいて、時間になると古めかしい電車がやってきた。運賃箱とかがある。事前に勘づいて切符を買っておいたのだが、やはり切符しか使えないようだった。学生がけっこう乗っていたのだが、彼らは毎日この少ない本数の電車に乗って通っているということか。放課後の時間もあまり融通が効かないだろう。大変だ。自分は都内の学校に通ってて通学時間が長いことをぼやいてたものだが、世の中には色んな苦労があることを当時の自分は知らなかった。

 

越前大野

車窓からの景色は眺めようもなかった。外は真っ暗闇だし、結露がすごいし、そもそも窓にカーテンがかかっている。携帯をずっといじるのもなんかな~と思って先日買っておいた徳田秋聲の文庫を読んだ。1時間ほど経って越前大野駅に着いた。ここに本日の宿がある。

雨が降りしきる中、閑静な町並みをスーツケースを爆音で転がして申し訳ないし心細いわ寒いわ濡れるわでちょっと大変だった。宿は古民家を改装したゲストハウスで予約時に見た写真は渋くてかっこよかったのだが、真っ暗でなんも見えなかった。宿泊手続きを簡単に済ませ、荷物を置き、宿の兄さんに教えてもらった近所のご飯どころへ行った。暗すぎてどの店も閉まってることも覚悟していて、万が一のために持参していた非常食を食べることも念頭においていたのだが、普通にやっていて助かった。

入った定食屋さんで頼んだのは醤油カツ丼にミニそばがついてくるセット。あまり知らなかったが醤油カツ丼はこの辺のちょっとした名物で、そばもこの辺は美味しいらしい。ちょっぴり地元っぽいのを食べれたのは運が良かった。聞けば越前大野は盆地にあり、住民の大半は地下水を利用して生活しているということだ。その水がとても美味しく名水として知られ、それでそばも美味いのだとか。醤油カツ丼はわからない。あまり食べたことない雰囲気だけど美味かった。

 

宿に着くと宿泊客が一人いて、今日泊まるのは我々だけのようだ。ふた回りほど離れた方だが親しみやすく、なかなか面白い人生を歩んでこられたようで最終的には宿の兄さんを巻き込んで、三人で数時間たっぷり雑談していた。こういうのだよ。こういうの。ゲストハウスに泊まる醍醐味は。

例によって翌日の予定を全然決めていなかったので、二人にアドバイスを求めた。越前大野内の見所を教えてもらえたのだが、恐竜博物館に行ったことがないことが知れると絶対行ったほうがいいと言われた。どこかのタイミングで行こうとは思っていたので、翌日とりあえず行くことにした。宿の兄さんが福井まで用事があるということで、行きしなに恐竜博物館まで送ってくれることになった。他に客のいない時期だからできることだろうが、正直かなり助かる。公共交通機関を使うと本数も限られるし早くても1時間かかるところを20分程度で済む。ありがたく乗せてもらうことにした。消灯時間を過ぎていたのでいそいそと寝室に戻って眠りについた。寝室は異常に静かで心臓の鼓動まで聞こえそうなほどだ。福井に来てからこっち時間がスローになった気がしているのだが、電車の待ち時間や寝室の無音のような何もない時間が長く引き伸ばされて感じられるからかもしれない。